2020/10/07 07:07


スペシャルティコーヒーとは?

日本ではスペシャルティコーヒーってここ10年ぐらいで話題になったような気がしますが、スペシャルティコーヒーが定義されたのは実は1978年ともう40年以上前なんです。サードウェーブコーヒーブームが20年前の1990年代からと考えると、日本での認知自体がかなり遅かったということかも知れません。
では、スペシャルティコーヒーって一体どんなコーヒーなんでしょうか?

日本スペシャルティコーヒー協会の定義を見てみましょう。


1.消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。

2.風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。

3.カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup)具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。

いろいろ難しいことが書いてありますが、ポイントとなるところを見てみましょう。

1.消費者が美味しいと評価する

これ一見当たり前のようですが、実はスペシャルティコーヒーが出てくる以前は商社など提供側が一方的にクラス分けしたコーヒーを提供しており、これが美味しいコーヒーですという押し売り型だったんです。その結果、大量消費時代に品質が低下しコーヒー離れを起こしたという過去もあります。なので、消費者主体の評価になったことは大きな変化なんです。

2.「際立つ印象的な風味特性」と「爽やかな明るい酸味特性」

もともとコーヒーはブラジルコーヒーやコロンビアコーヒーなどと国単位でブランディングされていました。また、日本で人気あるブルーマウンテン、キリマンジャロ、コナなどのブランドはたしかにエリアや標高を指定はしていますが、そのエリア範囲は広く、豆の品種が制限されているわけでもありません。また、いくつかの種類がブレンドされるのが前提になっており、コナコーヒーは10%含むだけでコナブレンドと呼ぶことができ、90%はどんなコーヒーでもいい状態なので品質は価格に見合うものではありません。
実際この3種類は日本の喫茶店でのみありがたがられているコーヒーで、スペシャルティコーヒーとしてはほぼ評価されていないのが現状です。それに対してスペシャルティコーヒーは地理的要素を非常に重視しており、その範囲は地域はもちろん農園単位まで明らかにしています。またコーヒーの品種もシングルオリジンと呼ばれる単一品種を指しており、それぞれ気候や地域特性を生かした風味を楽しむコーヒーとして評価しています。

次の「爽やかな明るい酸味特性」ですが、もともとコーヒーにとって酸味は評価を下げるポイントでした。コーヒーの酸味は収穫から精製と呼ばれる実を脱穀してから発酵させて洗浄し乾燥させるまでのプロセスがいい加減で発酵や腐敗から来るものだったり、保存の期間の長さや保存環境の悪さによる酸化が原因のもの、完熟しない豆を焙煎したことによる不味い酸味などが原因でした。
それがコーヒーの品質を上げるため、収穫では完熟した赤い実のみをピッキングするという努力や、精製もきれいな施設できれいな水を使って丁寧に行うなど地道な努力を重ねたことで、コーヒー本来のフルーツとしての美味しさを引き出すことができました。
その結果、爽やかな明るい酸味がプラス評価されるようになったのです。ここでいう酸味は鋭い酸っぱさなどでは無いということもポイントです。また、一部の人が酸っぱいコーヒー=スペシャルティとか=サードウェーブコーヒーと言っているのは間違いです。
こういった努力の上で品質が向上したコーヒーを、浅めの焙煎でコーヒー本来の良さを活かそうとしたのがサードウェーブコーヒーの流れなのです。

ちなみにこの2点は、コーヒーの評価方法を従来の減点方式からワインの評価を参考にした加点方式に変えたことでより特徴ある味を評価できるようになったことも大きく影響しています。

3.トレーサビリティー(From Seed to Cup)と、サステイナビリティ

これまでのコーヒー生産は日本の農協と同じで地域の農家のコーヒーを1箇所にまとめて混ぜて販売していたので、誰がつくったのかもわかりませんし、作る方も品質ではなく目方を気にしていました。トレーサビリティが意識されたことによって、これによって生産者側は自分の生産したコーヒーに対してブランディングを行うことができ、その品質に応じた価格で取引できるようになります。消費者もそれによって高品質で安心なコーヒーを購入することが出来るようになりました。
そして大量生産・大量消費の反省のもと、環境面の配慮や生産者への配慮が評価されるようにもなりました。この流れでカップ・オブ・エクセレンスというオークション販売の仕組みが出来上がり、農家が直接オークションで自分のコーヒーを評価され、直接販売できるようになったのです。

ということで、スペシャルティコーヒー自体の定義を紐解くと、コーヒーの歴史が見えてきますね。
ただスペシャルティコーヒーの定義は歴史を経て変遷していることや、表現が曖昧なため各農園や商社、店舗によって定義が変わっています。

ちなみに僕が生豆を購入しているコーヒー商社ワタルのスペシャルティコーヒーの定義はこちらです。

ワタルのスペシャルティコーヒーの定義

特定の生産国の小地域、区画内においてもたらされ、その土地の気候、土壌、人の3要素によって構成されるテロワール/マイクロクライメット(微小気候)を表現し、魅力のある風味特性を持つコーヒーを“スペシャルティーコーヒー”と私たちワタルは定義します。
スペシャルティーコーヒーの品質基準は、カップオブエクセレンスにおけるカッピングプロトコルに基づき、無欠点かつクリーンカップであることを前提とし、ワタルにおけるカッピングにおいて収穫後6カ月以内の検体の各項目の総和が80点以上であると認められること。
スペシャルティーコーヒーは生産から精製、流通まで一貫したトレーサビリティーが明確であること。
スぺシャルティーコーヒーは自然環境を尊重し、人道的な取り組みによって生産されること。
スペシャルティーコーヒーは標準的なコーヒーと一線を画し、品質に対するプレミアムが支払われて取引されること。

カッピングの評価点を具体的に記載したり、よりサステイナビリティに対して比重が置かれていることがわかりますね。
なので、単純に美味しいコーヒーを楽しむだけでなく、生産者と環境に配慮されているのがスペシャルティコーヒーだと認識していただけるとコーヒーの楽しみ方も変わるのでは無いでしょうか。

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