2020/11/15 11:13
家庭で手軽に楽しめる抽出はドリップですよね。
海外ではPour overと言われますが、挽いた豆にお湯を注ぐ抽出方法で、抽出の簡単さと後始末も手軽ですが、このドリップにも様々な種類の器具があり、それによって味が抽出できる味が異なります。ここでは代表的なドリッパーとフィルターによる味の違いをご紹介します。
【ハリオV60】
スペシャルティコーヒーといえばこれというほど有名なドリッパーです。円錐型が特徴で、ドリッパーの下部が大きく穴が開いており、そこからペーパーフィルターの先が出る仕組みになっています。それにより、お湯を注ぐ量に対して、抽出する量がダイレクトに変化します。
なぜこれがスペシャルティ向きなのかというと、下に紹介するカリタ式などのドリッパーは底面に小さな穴がいくつか空いていて、それによって抽出量をドリッパーが調節するようになっています。一方、V60は大きな穴が空いているため、抽出を調整するのはバリスタ(人)側で、自分好みに抽出しやすいというメリットがあります。
また、他のドリッパーに比べて縦長な設計なので、お湯がコーヒーを長く通過する仕組みになっています。これもコーヒーがお湯に浸かる時間を減らし、余分な雑味などを出しづらいことにも貢献していそうです。
一方で、仕組み上ドリッパーにお湯が溜まらないので、しっかりと蒸らし時間を取りたいという人には不向きです。また、注ぐお湯の量を注意しないと注ぐ量とスピードによって味の濃薄が変化するので抽出には注意する必要があります。
個人的に少量の抽出が難しいと感じるので、1人前などを抽出する場合はコーヒー豆の量を他のドリッパーに比べて多めにいれた方が良いと思います。
とはいえ、自分で味を作ってると感じられるドリッパーですし、豆量が多ければあまり注ぎ方に注意しなくても美味しく入れられます。
ちなみにV60という名前は、この円錐形の角度から来ています。似た形状のドリッパーとしてコーノ式というものがあります。コーノ式とV60の違いは、コーノ式の方が穴が小さく、リブと呼ばれる側面の溝が少ないため、お湯の落ちるスピードが遅く、お湯の注ぐ量に対して抽出量の変化が少なめになっています。
【カリタ式・メリタ式】
おそらく一番よく見る台形ドリッパーの代表的な2種類です。カリタ式とメリタ式の違いは底に開いている穴の数で、カリタ式が3つ、メリタ式が1つになっています。この穴によって抽出量を調整しています。穴の数が少ない分、メリタ式のほうがゆっくり抽出されます。
V60と対象的にドリッパー側に抽出量の調整機能があるため、比較的適当にお湯を注いでも大丈夫です。台形形状でコーヒーが底に溜まり、そこでお湯に浸かる時間が長いので、しっかりと蒸らしたい人にもオススメです。
一方で、自分好みに抽出する調整幅が少ないことや、コーヒーがお湯に浸かる時間が長いので、雑味など余計な味が出てしまう可能性もあります。
【カリタ ウェーブシリーズ】
カリタ式を進化させたドリッパーとフィルター。ドリッパーの内側にあるリブだけでなく、フィルター側の形状をヒダを持った形にすることで、お湯を落としやすくしています。また、底面が丸く平らになったことで、豆の偏りが減り均一になりやすいようです。
個人的にはお湯を注ぐ面が通常のカリタ式に比べて広くなっているので、口が太めのポットでも注ぎやすいというメリットがあります。あと、フィルターのヒダがあることで、コーヒーの壁が崩れにくく、コーヒードームが安定しやすいメリットがあるかなと思います。(コーヒードームとは、コーヒーにお湯を注いだ時に豆が膨らんでドーム形状になることです)
Brewers cupのチャンピオンも好んで使っているなど、V60とは違った良さがあるようです。
マイナス点としては、フィルターが二つ折りに出来ないので嵩張ることや、少し値段が高いことや、売っているところが比較的少ないことです。
似た製品としてはORIGAMIドリッパーというのがあります。これは使ったことがないのですが、見た目は可愛いですよね。ウェーブシリーズとV60を組み合わせたような形なので、その両方のいいとこ取りをしているのかなと思います。
【メタルフィルター系】
最近特に新製品が多く出てきているのがメタルフィルターです。ドリッパーと一体化しているものや、ドリッパーと組み合わせて使うものなどがあります。
素材はステンレスや金メッキなど色々ですが、メリットはコーヒーのオイル分が抽出出来ることです。コーヒーのオイル分には甘みや旨味、香りなども多分に含まれるのですが、ペーパーフィルターはこれらを吸収してしまいます。その分ペーパーフィルターで抽出したコーヒーは味がスッキリし、クリアな味になります。
ただ、スペシャルティコーヒーでは、そのコーヒー豆本来の魅力を余すこと無く楽しみたいというニーズから、メタルフィルターの人気が高まっています。また、使い捨てフィルターじゃないので、エコなフィルターという点で使う人も増えているようです。
一方で、メタルフィルターはどうしてもペーパーなどに比べて目が荒くなるので、抽出したコーヒーにコーヒー豆の微粉が出てしまい、舌触りがざらついたり、底面に微粉が溜まるため最後まで飲めないという点もあります。
【ネルフィルター】
昔の喫茶店で多く使われていた綿のフィルター。個人的には一番オススメだけど、一番手間がかかるツールでもあります。
綿を使うメリットとして、メタルフィルターと同じくコーヒーの油分も抽出して楽しめること。しかもネルは微粉が落ちないので、一番美味しい抽出液をクリアな液体として楽しめます。
ただ、とにかく手間がかかります。初めて使うときはネルフィルターについている糊をとるためにお鍋で煮る必要がありますし、使った後も洗って水につけた状態でタッパーに入れるなどして保存する必要があります。
毎日コーヒーを淹れる人にとっては、慣れれば大したことないのですが、頻度が多くない人だと、気づくと冷蔵庫でカビだらけになったネルフィルターに出会うことも(怖)。。
【その他ペーパーフィルターについて】
ちなみにペーパーフィルターにも、漂白したものと無漂白のもの、竹を使ったバンブーフィルターなどがあります。バンブーはエコな素材として販売されているのですが、竹の香りがかなり強いので、コーヒーに臭いがついてしまいます。特に浅煎り焙煎のコーヒーを楽しみたい人にはお勧めできません。中煎り以上の焙煎でも、しっかりとお湯通しをしてから使うと良いと思います。
その他にナイロンのメッシュフィルターなどもあります。メタルフィルターの良さを残しつつ、微粉を出づらくしたもので、使い捨ででないのでエコでもあります。ただ、使うにつれてフィルターに色がついてしまったり、洗いづらいことでメタルに比べると衛生面で劣る部分もあるなどあまり使われていない印象です。